MLC通信-院長便り

第2回 2016.8.18

ドクター美馬の自然妊娠力UP講座第1回
今こそもう一度、自然妊娠を考えよう~あなたも必ず妊娠できる~

はじめに

私の略歴を簡潔に申し上げます。慈恵会医科大学医学部を卒業後、産婦人科医局員を経て、立正佼成会附属佼成病院に勤務、お産中心に修行に励みました。当時の分娩数は今では信じられないぐらいに多く、一晩に10名の赤ちゃんを取り上げたこともあります。

父親の急逝により、慈恵の附属病院産婦人科医長の職を辞し、開業産婦人科病院院長職についたのは30代半ばのことです。お産を主としておりましたが、合わせて思春期から性成熟期、更年期および老年期まで、幅広い年齢層の婦人科疾患に対応してきました。

2000年、1カ月におよそ100件の分娩を手がけておりましたが、体力に限界を感じ、不妊治療の道に進みました。加藤レディスクリニックにて研修、日本A-partの資格を取得し、体外受精登録施設として、一般不妊治療と合わせてART(体外受精・顕微授精)に邁進してきました。顕微授精により45歳で出産された方は、当時、日本における自己卵子による最高齢出産例でした。

2013年、美馬レディースクリニック開業。これまでの不妊治療の経験を糧に、自然妊娠に力を注いでおります。

なぜ今、自然妊娠にこだわるのか

卵巣機能へのダメージを防ぐ

当院を開院直後に受診されたある患者様に、私は大きな衝撃を受けました。30代前半の彼女の卵巣は頻繁に体外受精を繰り返したことで、大きなダメージを受けていたのです。
体外受精の場合、多数の卵子を採取することが重視され、ときには非常に強い排卵誘発剤が使われます。このため、卵巣がダメージを受ける心配もでてきます。

通常、不妊治療専門医には、女性の体と卵巣機能に無用の負担がかからないように、体と卵巣にやさしいホルモン治療(低刺激療法)が求められます。しかし、この患者様の場合は過剰刺激によって卵巣機能は疲れきっていたのです。

女性の体にやさしい治療を

私は、赤ちゃんの基となる生殖細胞(卵子、精子)の質の向上こそ、不妊治療のスタートと考えています。とくに女性にあっては、妊娠のあとにはお産まで266日の妊娠生活があり、産後には息の長い子育てが待っています。

体外受精の妊娠率向上を期待するあまり、卵巣にダメージが生じたり、体の基本的な健康が損なわれては困るのです。

このような考えのもとに、当院では科学的な医療と並行して、体が本来もつ自然妊娠力を目覚めさせ、高めるために、患者様が生活のなかでできる努力を積極的に手助けしています。

日常生活のなかで卵子・精子の老化を防ぐ

年齢が高くなるに従い、卵子が老化するのは生物として逆らえない現象です。現代の生活には、卵子の老化を促す因子が多数あります。しかし、たとえば「活性酸素」は細胞の老化を促進させますが、一方で体内の抗酸化力をあげることで老化を防ぐことができます。

抗酸化力アップの鍵は皆さんの日常生活にあります。当院では、食生活をはじめとするライフスタイル、仕事量、ストレスの有無など、患者様の生活を詳細に問診したうえで、お一人お一人に合わせた対処法を丁寧に指導します。

最近では男性不妊の研究が進み、精子もまた加齢とともに老化することがわかってきました。当院ではご主人のライフスタイルに対するアドバイスも積極的に行っています。

卵子の老化を防ぐ7つの対処法

とくに重要とする対処法は以下の7項目です。
■冷えを改善し、体を温める
■体内の抗酸化力をあげる
■有酸素運動でアンチエイジング
■休息とホルモン動態を守るために睡眠を十分にとる
■不妊に関与する婦人科疾患の早期発見と治療
■不妊の重要原因-クラミジア感染症の予防、早期発見、治療
■太りすぎと痩せすぎを防ぎ、適正体重を守る

当院一般不妊治療の基本姿勢

タイミング法・AIHの施行回数

当院不妊治療の基本は、タイミング法および人工授精(AIH)です。軽症男性不妊がなく、排卵に大きな問題のないご夫婦の場合は、タイミング法に6回チャレンジいただきます。

妊娠に至らない場合はAIHに移行しますが、AIHには6回以上、チャレンジしていただきます。但し、治療法としてAIHが有効なご夫婦の場合、多くは5~6回までに妊娠し、これ以降の妊娠率は急カーブで低下する傾向があります。
*毎周期治療した場合には12周期、即ち治療開始から約1年が勝負と考えています。

タイミングの取り方を丁寧にアドバイス

排卵に合わせてタイミングをとる場合、超音波検査や血液検査で的確に排卵を予測し、性行為をもっていただくのが原則です。しかし、ご主人の仕事だけでなくご自分の仕事のために、タイミングをとりにくいご夫婦も多いのです。

そんな患者様のために、当院では電話による相談に積極的に応じ、「タイミングは今夜が無理なら明日の朝でも大丈夫!」など、きめ細かいアドバイスに努めています。

AIH妊娠成功率を高めるために

AIHではタイミング同様に、排卵に合わせての施行が最重要です。ご夫婦で来院してもらい、新鮮精液による精子調整法とAIHが原則ですが、仕事や過労などさまざまな理由からタイミングが合わないケースもあります。

当院では、精子の凍結保存を積極的に行い、融解凍結精子によるAIHで高い妊娠率を得ています。

着床率を高めるポイント

卵子と精子が受精したのち、妊娠への次のハードルは受精卵の子宮内膜への着床です。このため、子宮内膜の調整は非常に重要です。

第一に、子宮内膜ポリープや子宮筋腫、とくに粘膜下筋腫の有無を確認し、必要な場合には適切な治療を受けていただくのが原則です。合わせて、当院では以下のような治療および生活指導を行っています。
■黄体補充療法:ルティナス+デュファストンの投与。
■受精卵の着床後のセックスを禁止(着床はタイミング法・AIHの約5日目)。
■植物性イソフラボンの積極的な摂取を勧める(大豆または大豆製品)。
■ソイチェック陰性の場合は、Dr.AglyMax-sをお勧めします。

多様な治療法の組み合わせ

漢方薬療法-柴苓湯(さいれいとう)

症状に応じて多種多様の漢方薬を処方しますが、なかでも、私が注目しているのが柴苓湯です。柴苓湯は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の原因のひとつであるLH(黄体形成ホルモン)の過剰分泌を改善し、排卵障害が軽減されると期待されます。

アーユルヴェーダ

当院ではアーユルヴェーダのうち、最も実績ある女性のためのレシピを採用しています。
このレシピの期待される効能として、○卵巣に働きエストロゲン様活性、○女性生殖器系の活力の改善、○血液や生殖器官の滋養・若返り、○健康なバランスのとれた女性ホルモンの産生を維持、○規則正しい月経を維持、○更年期への移行を緩和、等があります。

男性用として16種類のハーブを調整したレシピを、男性不妊の患者様に試用いただいたところ、7カ月後には精子数、精子運動率、奇形精子率ともに大幅に改善されました。

医療用サプリメント

当院が患者様にご紹介するのはすべて科学的データのある医療用サプリメントです。

■グリスリン
マイタケから抽出されるタンパク質によって構成されている天然成分グリコプロテイン。インスリン抵抗性を改善する作用があることがわかっています。PCOSの原因のひとつ、LH(黄体形成ホルモン)の過剰分泌を改善し、排卵障害が軽減されると期待できます。

■DHEA〔デヒドロエピアンドロステロン〕
副腎や性腺で産生される男性ホルモンのひとつ。生殖医療の分野では、○39歳以上の女性の卵子の質が上昇、○受精卵染色体正常率の上昇、○早発卵巣機能不全の改善などが報告されています。

■Dr.Agly Max-s(ドクターアグリマックス-エス)
発酵大豆胚芽抽出物を原料とする医療用アグリコン型イソフラボン。受精卵の子宮内膜着床に必要な細胞間伝達物質(サイトカイン)の産生促進、抗酸化力、血流改善等が確認され、他医療機関の研究データでは、34.3%と高い妊娠率が認められています。

■ミサトール(梅エキス)
国産梅を原料とする飲みやすい梅エキス。体内のpH調整により、男女生み分けへの有用性が高いと注目されています。その一部は、ミサトールの原料である梅エキスの抽出成分:MK615として、PubMed(米国立医学図書館が提供する医学・生物学文献データベース)に収録されています。

さいごに

ご自身の治療経験をお話しいただいた患者様に、改めて深く御礼申し上げます。

◎A子さんは多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)による10年間の無月経、体外受精の失敗を経て当院を受診され、カウフマン療法等により月経が再開したのち、自然妊娠されました。誠心誠意、治療に当たった美馬院長でさえ「奇跡の妊娠」と感嘆した自然妊娠力UPへのチャレンジをお話しいただきました。

◎B子さんご夫婦はまさに二人三脚で妊娠に至りました。「妻がさりげなく置く不妊克服のテキストで妊娠の仕組みを学び、積極的に治療に関わりました。妻の誘導が非常に上手だったと実感しています」というご主人の言葉に、多くの方が深く頷いておられました。

A子さんは妊娠7か月、B子さんご夫婦は赤ちゃんを抱っこしての参加でした。実は、不妊治療が現在進行形である患者様にとって、妊娠に成功された方のお話は抵抗感があるのではないかと危惧いたしました。しかし、アンケートを拝見する限り、その心配は杞憂でした。
以下に講演後寄せられた感想の一部を紹介させていただきます。

●感想

○多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)です。A子さんが10年間の無排卵のあと、自然妊娠されたと知り、とても励まされました。

○カウフマン療法を受けていましたが、今は治療を中断しています。カウフマン療法で妊娠されたと伺い、勇気が出ました。治療を再開したいと思います。

○治療にあまり積極的ではない夫にイライラしています。B子さんの妊娠の仕組みや不妊治療の本を、さりげなくご主人の目につくところに置いたというお話、とても参考になりました。

○夫婦の間に温度差があります。とくにうちは、夫は正常で私の排卵障害が原因なので(涙)。
私の焦りをぶつけるのは逆効果とわかりました。有難うございました。

第1回講演会は、大変ご好評をいただき、次回開催を望む声を多数いただきました。
近々第2回を予定しております。よろしくお願い申し上げます。

美馬レディースクリニック 院長 美馬 博史

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